2020年東京五輪で初めて競技に採用される空手で、「最強」と呼び声の高い高校が大阪にある。私立大阪学芸高校(大阪市住吉区)。空手道部の部員たちは高校生の全国大会のみならず、アジア選手権など海外の大会のジュニア部門などでも上位入賞を果たしている。五輪イヤーを前に空手への注目が高まる中、存在感を示している同校の強さの秘密を探った。(高橋義春)
■メダリスト続々
大阪学芸高校空手道部は今年、創部50年を迎えた強豪校。これまでにインターハイなど全国大会に数多く出場し、3月の全国高校選抜大会では組手や形で優勝。4月のアジア選手権大会のカデット(14、15歳)、ジュニア(16、17歳)でも個人や団体で金、銀、銅メダルを獲得した。
東京五輪出場には至らないものの、全国高校選抜大会を女子個人組手(59キロ以下)で連覇している坂地心(こころ)選手(17)=3年=や、アジア選手権大会(ジュニア)で金メダルを勝ち取った男子団体形の主将、中澤祐紀(ゆうき)選手(18)=同=など有力選手も多い。
強さの根本にあるのが、モットーの「自分で考える空手」。世界大会経験者らのOB・OGを中心としたコーチ陣はさまざまな技を伝授できるが、練習でどれを覚えるか、実戦でどう応用していくかは選手次第。型にはめない指導方針を展開している。
■最先端の練習法
練習メニューの骨子を作成するのは、全国高体連空手道専門部常任委員などを務める近藤永(えい)監督(55)。「実績がそれぞれ違う選手らは、できる範囲や技量も異なる。練習では個々の特徴を生かすことが大事」と話し、選手自身に判断させる重要性を説く。
常に新しいことを取り入れる練習も特色だ。最近では、体幹の筋力強化を図る「コアコーディネーショントレーニング」を採用。ボクシング世界チャンピオンのトレーナーなどを務めた講師を招き、空手の動きの軸となる脊柱や肩関節、股関節から意識的、優先的に鍛える。
時に厳しく、時に導くように選手らと向き合う中で、近藤監督やコーチ陣は「勝ちにこだわる」ことを重視する。選手らには試合の前、中、後の自分自身の気持ちを振り返り、メモ書きすることを徹底させている。それを繰り返すことでメンタル面が強化され、選手らは緊張が強いられる試合でも普段通りの力を出し切れるという。
■心も体も成長
練習相手を求め、全国の強豪校を訪れることで試合を重ね、質の高い経験を積むことにも腐心する。さまざまな場に出向いていく姿勢が大切だという。
大学空手道部のコーチや実業団、マスターズ大会の選手として活躍するOB・OGの存在も大きい。部員らが困難に直面した際に相談できる頼もしい兄貴・姉貴分でもある。
近藤監督は「全部員が試合に出場できるわけではなく、練習は厳しいが、本気で勝ちにいくことで心も体も成長できる。勝てば大きな喜びが得られ、負けて味わう悔しさは必ずこれから先への糧になる」と話している。
空手 1920年代に沖縄から広がった日本発祥のスポーツ。愛好者は1億3千万人以上、競技人口は約6千万人といわれる。競技には、1対1で選手が戦う「組手(くみて)」と、技の正確さやスピードなどを競う「形(かた)」がある。世界空手連盟には194カ国・地域が加盟。2020年東京五輪で初めて五輪種目に採用されたが、24年パリ五輪の追加種目候補から漏れた。国際オリンピック委員会(IOC)はパリ五輪の種目を20年12月の理事会で最終決定する見通し。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース